星で究める、私らしさとファッション考

現役ファッションエディターによる、本当に自分らしいおしゃれをホロスコープから探究するブログ。

7ハウス太陽 ――掛け値なしの「対・ひと」への誠実について――

ファッション誌のエディターという仕事はキラキラと思われがちだが、実のところ真逆だ。

ある意味、滅私奉公的であり、前時代的だし、時給換算すると正直、泣けることもままある。

 

その仕事は、

作品全体を束ね創りあげるディレクションであり、

金を差配するプロデュースであり、

全スタッフが気持ちよく仕事をしてもらう(ひいては、毎月あまた仕事を与えられている売れっ子の彼ら彼女らに、私の企画を特別視してもらい、最大限の能力を発揮してもらうための一助として、そのときできうる限りの条件を整え、力を尽くす)究極のサービス業であり、

才能あふれる人たちを御しながら力を尽くさせる興行師であり、

そうやって集めた素材がそろったところで孤独になり、机の前で脳みそをひっかきまわして形にする構成作家であり、

レイアウトを鑑みつつ文字通り筆舌尽くす売文屋であり、

みんなに力を尽くしてもらった結果支離滅裂になる恐れをはらんだコンテンツを、なんとか体裁を整えて形にしながらその一切の責任をとると覚悟したクローザーである。

 

・・・と書いていると、なんでこんな因果な商売をし続けてきたのか、そしてまだし続けたいと思っているのか、と、自分に呆れつつ、ちょっと恐れ入る。

 

そうし今日もやりとりしていたなかで「あっ、これが7ハウス太陽か!」と思ったことについて。

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先週スケジュールを聞いていたヘアメイクさんの事務所から、週をまたいだ今日「オファーを受けたときから調整を重ねているものの、現段階では先にキープが入っていた別件がまだ動かない。どこまで待ってもらえるか」との連絡を受けた。

 

「まだ待ちたいし、可能ならばぜひ彼女にお願いしたい。が、大事な企画ゆえ並行してほかのヘアメイクさんにもうっすら打診を始める。でも決定は出さないから、ギリギリまで待たせてほしい」と、まったくの正直ベースで誠実に告げた。向こうもいわゆる

「お上手」ではなく、こちらのまっすぐな意図と意志をしっかり汲んでくれた、とわかった。そのうえでお互いそれぞれよきように進めよう、とはいえ願わくばご一緒できるように……との意図を、言葉上のみならず言外でも共有した、と思えた。

1対1の関係性を築くこと、真摯に誠実に対峙すること。そのことによってお互いにとって豊かな恵み(物質的のみならず非物質的、精神的にも)を得ること。今までどうもよくわからず納得できていなかった7ハウス太陽の意味と喜びを、なんとなく腑に落とすことができた瞬間だった。

 

ファッション誌のスケジュール調整は、オファーされる事務所サイドには駆け引きや計算が多分にあろうが、オファーする側であるエディター側は正直、直球でいける。

というか私個人は、打診する時点でも末時点でも駆け引きなく、直球であなたにお願いしたいから、ジャストミートまで待つ! という姿勢を貫き続けている。とはいえ、この進め方は異例というか、エディター道としては邪道だ。

いろんなひとにキープをかけ、スケジュールや各方面引っ張れるか否かの感触を計算のもと、「今回はごめんなさい」といってキープをはずしたり決定を入れたりする。それが、仕事の進め方として最初にならった(というか見覚えた)やり方だった。

 

クリエイションを構成するにあたって、現実とリスク/理想と仁義/そして時代、世相への覚悟と諦念…を天秤にかけたうえで、あらゆる保険をかける。エディターとして経験と年月を積むたび、そんな「王道のエディター道/進め方」という不文律の慣例に、納得ができずたまらなくなった。

いつからか私は、お願いしたいスタッフ(とその事務所)にひとりずつ声をかけ、ギリギリまでそのひとりを待つスタイルに振り切った。それは、獅子座の私にとっては王道だし正道だったのだと、ホロスコープを知った今では首がもげるほど頷ける。

 

カメラマン、スタイリスト、ヘアメイク、モデル。それぞれのスケジュールを確実にもらえる可能性を探る。待ちの期間にもそれぞれの進捗をちょいちょい探りつつ、彼ら彼女らとその事務所の最終選択を待つ。ダメだったら、胃に穴が空きそうになりながら次善のスタッフにあたり、お願いし、手配する。それが雑誌エディターの仕事の基本、数値でいうなら1/5~1/4くらいかな、と個人的には思っている。とはいえ次善と言いつつも、結果この方にお願いできてよかったということもままあるから、この仕事の掛け合わせの妙、刹那的な成功というギャンブル性は、面白い。

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そうやってクリエイターのみなさんへの仕事のオファーを重ね、本人や事務所のマネージャーさんとの緻密なやり取りを重ねて信頼を勝ち得てきたことは、内心誇りに思っている。自分自身に対しても、企画意図を自分の中で習熟させディレクションするビジュアルとして結実させ、納得がいく原稿を書いてきたことと同等に。

一対一の対話と調整を、誠実に地道に積み重ねてきたからこそ培われた、確かな相互関係やコミュニケーションの大切さ、かけがえのなさ。自分の太陽が7ハウス(獅子座なのに!)、と初めて知った占星術初学者のころ、「人ありきの人生なんて納得できない、絶対に嫌だ!」と、痛烈に感じたことは忘れられない。今でも、主体性のある人生を、と正直もがいてもいる。そんななか、さっきもらった「進捗がない、交渉してるがまだ動きがない、でもぜひ一緒にしたい」という電話を受けての一連のやりとりは、7ハウス太陽――対人関係で自分を発揮する太陽――を改めて実感できた事象だった。

 

 

6、7、8ハウスに天体をもつ、いわば他者の存在が自分の実在の前提となることにうんざりし、絶望し、迷っているひとや、その周りのひとたちへ、ちょっとでも参考になれば。